熱処理の話
ご挨拶
『熱処理とは何か?』
一言で熱処理と言っても奥が深い世界です。そこで、熱処理について簡単に説明していくコーナーを設けました。不定期更新をしていきますので、是非ご覧下さいm(__)m 《HP管理者≫
第1回 熱処理の歴史
第1回目は熱処理はいつから始まったかについてお話ししましょう。
人類が鉄を使い始め、武器(剣や刀)を作るために考えられたのではないでしょうか?
日本刀の誕生は奈良時代と言われており、中国大陸より優秀な刀鍛冶が渡来し刀の製造技術が発展したと言われています。
日本の熱処理技術が工業的に発展するきっかけになったのは日清戦争によるもので、イギリスから軍艦を輸入したときに習得した様です。
日本の熱処理技術は紡績部品や自動車部品の製造に対して非常に進歩しました。今では欧米に負けないくらいにレベルアップしています。
※参考 大和久重雄 著 『熱処理のおはなし』
第2回 熱処理の名称・定義
第2回目は熱処理の名称・定義についてお話しましょう。
一言で熱処理と言っても、様々な用語・名称があります。今回はその中でも代表的な(良く使われる)用語についてのお話です。
焼入れ・・・金属製品を所定の高温状態から急冷する処理
焼戻し・・・焼入れした組織を、変態又は析出を進行させて安定な組織に近づけ、所要の性質及び状態を与える為に、適切な温度に加熱し、冷却する処理
焼入焼戻し・・・鉄鋼製品をAc3又はAc1点以上の適切な温度に加熱後、適切な冷却材で急冷(焼入れ)、ついで焼入れによる脆(ぜい)性を改善、又は硬さを調節し、若しくは靱(じん)性を増す為に、Ac1点以下の適切な温度に加熱した後、冷却する(焼戻し)処理
焼なまし・・・金属の機械的性質を変化させ、残留応力の除去、硬さの低減、延性の向上、被削性の向上、冷間加工性の改善、結晶組織の調整、ガスその他不純物の放出、化学組成の均一化等を行う為の処理
焼ならし・・・鉄鋼製品の前加工の影響を除去し、結晶粒を微細化して、機械的性質を改善する為に、Ac3又はAccm点以上の適切な温度に加熱した後、通常は空気中で冷却する処理
以上、5つの代表的な熱処理用語を紹介致しましたが、JISの定義をそのまま書き写した説明では、分かりにくいですね。
簡単に言えば・・・
焼入れ・・・鋼を硬くする熱処理
焼戻し・・・鋼を粘くする熱処理。焼入れの後で行う
焼入焼戻し・・・焼入れで鋼を硬くする。硬くしたままでは脆さが出る為、焼戻しをして鋼を粘くして、じん性を出す
焼なまし・・・鋼を軟らかくする熱処理
焼ならし・・・鋼を強くする熱処理
という事になります。
次回の熱処理の話も用語・定義に関する話をしましょうかな!(^^)!
第3回 熱処理の話(名称編)
今回の熱処理の話も、いろんな名称についてお話します。
前回は・・・焼入れ・焼き戻し・焼きなまし・焼ならしについて勉強しました。
今回はなんと!!!!
浸炭焼入れについてお話しましょう(p_-)
浸炭焼入れ・・・鋼製品の表面層に炭素を浸透させて(浸炭)、焼入れする処理です。
浸炭焼入れは、表面熱処理の一つ(表面熱処理は大きく分けて3つ有る)で表面硬化になります。
表面硬化も二つに分かれており、浸炭焼入れは化学的表面硬化法になります。
化学的表面硬化法・・・鋼の表面の化学成分を変えて硬くする方法で、浸炭と窒化がその代表的なものです。
浸炭・・・低炭素鋼(肌焼鋼)の表面に炭素を浸み込ませて高炭素鋼とし、その後で焼入れして硬くする方法です。SCM415、SCM420等の低炭素鋼を使い、共析(パーライト)の組織に変化させて焼入れする(共析鋼とは0.77%の炭素量)
炭素が浸み込む為には鉄はα鉄よりもγ鉄になっていたほうが好都合なので、浸炭温度としてはA3変態点以上の完全オーステナイト化を採用し、通常930℃付近を狙います。